コラムcolumn

第1弾、追手門学院大学経営学部 学部長 水野浩児様 によるコラム

追手門学院大学経営学部 学部長 水野浩児

昭和43(1968)年生まれ
追手門学院大学 経営学部教授・学部長
これまで奈良・三碓陸上クラブで小学生の指導にあたるなど
陸上競技に熱い情熱を注ぐ
ラジオ大阪「水野浩児の月曜情報スタジオ」出演
2017年7月~毎週月曜日放送

第1弾、追手門学院大学経営学部 学部長 水野浩児様によるコラム

[その3]「スポーツ」という言葉からどのような印象を受けますか?

皆さんは「スポーツ」という言葉からどのような印象を受けますか?
健康的、爽やか、楽しい…など明るい印象を思い描く人が多いのではないでしょうか。

2年前、私が勤めている追手門学院大学経営学部のオープンキャンパス(高校生に大学を見てもらい、進学の参考としてもらうイベント)において、ガンバ大阪の社長としてガンバ黄金時代の礎を築き上げた経営者としてのキャリアをお持ちの金森教授(当時)に登壇いただき、高校生に向けて「スポーツマネジメント」の講義をおこなう機会がありました。

その講義の中で、金森先生は黒板に大きく「スポーツは○○と□□を与える」と書いた後、参加している高校生に対して「○○と□□に当てはまる言葉はなんだと思う?」と次々に問いかけていきました。皆さんならどのように答えますか?

高校生からは「勇気と希望」や「団結と喜び」など様々な回答がありました。程よいあどけなさを感じるポジティブな言葉が並んだこともあり、授業参観をしている保護者のような気持ちで様子を眺めていました。ひと通り尋ねたあと、金森先生が○○と□□に当てはめた言葉は「喜びと苦痛」でした。その板書を見て、ぞわぞわと鳥肌が立ったことをいまでも鮮明に覚えています。

私自身も選手として、指導者として様々な競技に携わってきましたが、「喜びと苦痛、どっちが多かった?」と聞かれると、明らかに苦痛のほうが多かった、と即答できます。マラソンランナーの皆さんのみならず、スポーツに打ち込んだことがある人のほとんどは、私と同じ回答になるのではないでしょうか。

そして、その思いは選手としてそのスポーツを行っている自分自身だけではなく、その姿を応援する人にも当てはまるような気がします。

私が現在顧問を務めるサッカー部の部員は約70名。サッカーは11人の選手がピッチに立つ競技ですから、チームの代表として試合に出場できるのは一握り。どれだけの努力を重ねても、ベンチに入れず、大会ではスタンドから大きな声で仲間たちに声援を送る部員はどうしても出てきてしまいます。そして、その部員にはもちろん、その努力を陰ながら支えてきた家族がいます。毎年、このような非情な場面を幾度となく目の当たりにしていますが、こういった「苦痛」があるからこそ、スポーツを通じて得た「喜び」は何ものにも代えることができない高揚感を生み、自分自身が納得できる成長を感じられるものなのかもしれません。

スポーツは不思議です。「苦痛」の絶対量が明らかに多いにもかかわらず、その「苦痛」があったからこそ、いまの自分があったり、より成長・進化できたり、一生の宝物になる経験をすることができます。
なぜかマイナス面ばかりに目がいかない、何事もプラスに転じてしまう「スポーツ」は偉大ですね。

[その2]スポーツをストレスなく行えることは幸せなこと

最近、「スポーツをストレスなく行えることは幸せなこと」だと認識する機会がありました。

私は約15年前から追手門学院大学体育会男子サッカー部の顧問をしています。今年度はコロナ禍の影響で、練習ができないだけではなく、学生サッカーにとって最も重要な関西学生リーグ前期日程が中止になるなど未曾有の事態の連続でした。

9月に入り、関西学生リーグ後期日程は開催することとなり、ようやく学生サッカー界も活気を取り戻す契機になると思った矢先、今度は試合をできる場所が確保できない、という大きな問題に直面しています。学生サッカーの公式戦の多くは連盟に所属している各大学のグラウンドを使用することが多く、各大学の協力の下、リーグ戦などが成り立っているのですが、今季は多くの大学が他大学を招いての対外試合を禁止しています。追手門学院大学も感染拡大防止の観点から、他大学の学生等の入構を制限しており、試合会場としてグラウンドを提供することが叶いません。顧問として非常に歯がゆい想いをしています。

最近、ランニングやサイクリングといったスポーツが再注目されているのは、時間や場所に関する制約が他のスポーツと比べて少なく、自分で環境を整えることができる、コントロールできる点が大きく影響しているのではないか、と感じています。テレワークの浸透にともない、自分でコントロールできない環境や制約(出勤時間や会社での座席など)が薄れ、自分自身をマネジメントする機会が増えたことから、自由意志が強く働くスポーツに人気が出ていると思うのは考えすぎでしょうか?

再注目され、ブームに乗っかっているようですが、私自身も最近ランニングをはじめ(正確には再開し)、カラダを自由に動かすことに小さな幸せを感じているところです。が、走っている最中や走り終えて間もなくカラダのどこかに痛みを感じることが多くあります。特にひざや足首に痛みが出ることが多く、歳のせいだ、と悲しくも言い聞かせていました。

そのような中、還暦を過ぎた知人に会う機会がありました。その方は、今でも180度近い開脚ができ、腰痛もなく、健康状態も非常に良好とのことだったので、その秘訣をうかがったところ、私が昔言っていた「教え」を忠実に守り続けた結果だ、と言うのです。

私は以前、住んでいる地区の子どもたちに走り方の指導をおこなっていたことがありました。そのときに繰り返し伝えていたことが「ストレッチを大事にすること」でした。知人との話から当時つけていたメモの存在を思い出し、収納箱から引っ張り出すと、そこには「反動をつけずゆっくり」「痛く感じず、筋肉が気持ちよく伸びているところで20秒程度」「息を止めず、リラックス(自然な呼吸で)」「身体を温めてから(軽いジョギング・入浴後等)」「人と争わない(自分で目標を設定)」と、5つのポイントが書かれていました。指導する立場にあった者が、すっかりそんなことを忘れ、柔軟性を失い、ひざの痛みにうなだれる一方、継続は力なりと言わんばかりに柔軟性を維持し、スポーツに限らず豊かな生活を送る知人に感服するばかりでした。

スポーツ、運動は人々のこころを豊かにする活動の1つです。その活動を支えるのは運動をおこなうための環境と資本となるカラダです。自由にのびのびと運動をするための環境やカラダが凝り固まってしまっては、豊かになるための活動でかえってストレスを感じてしまいます。コロナ禍を通じて、自発的な活動で柔軟性を維持・向上できるカラダと違って、運動をおこなう環境はなかなか柔軟性の担保がしにくいことに気づかされました。環境に嘆くことなく、運動を楽しむことができる日々が一日でも早く戻ってくることを祈るばかりです。

[その1]コロナ禍の中で

7月下旬、大学のグラウンドでサッカー部の練習が再開しました。4月からオンラインでの講義が中心となり、大学で学生に会うことがほとんどなく、約5か月ぶりに再会することができました。学生のいない、静けさの漂う大学は違和感だらけ。綺麗なキャンパス、静穏な環境で執務に没頭できる日々よりも、学生の元気な姿が所狭しと見かけることができる日常の尊さに、言葉で表すことができない感情がこみあげ、心が豊かになっていく感覚に浸りました。豊かさは、「モノ」ではなく「気持ち」で満たされるものだと再認識しました。

私の前向きな姿勢とは対照的に、大学生は前途多難です。世界経済のV字回復は困難な状態で、4月から6月のアメリカGDPは32.9%の減少と、衝撃的な数字が出ています。大学教員の立場で気になることは学生たちの就職活動ですが、厳しい時代になることが予想されます。

今年の4年生は、多くが3年生の早い時期からインターンシップという名目で就職活動がスタートしていました。コロナの影響で突然環境が悪化したと思われていますが、実は2019年夏頃から米中貿易摩擦の問題などに起因して、景気に陰りが見えていたような印象があります。そのような中、新型コロナウイルス感染拡大防止にともない、就職活動に制限がかかり、就職活動(インターンシップ)に注力していた学生はオンライン面談などで早々に内定が出る一方、3月頃から本格的に頑張ろうと考えていた学生は、入口すら閉ざされた状況に陥ってしまいました。その後7月に入り採用活動は再開し始めたものの、内定獲得状況は二極化している印象を受けます。現在の3年生は過去の情報が参考にできない状況で、大きな不安を抱えながら、企業の採用活動(インターンシップ)に参加し始めています。

2021年3月決算予想では、多くの企業で大幅な減益もしくは赤字が見込まれます。企業にとっては厳しい状況下ではありますが、人材確保は企業の生命線と考え、採用数は減らさないでほしいと心より願っています。

ただ、もしかしたら、就職活動のことを気にして病んでいるのは私だけかもしれないと錯覚してしまうほど、私の研究室からよく見える大学グラウンドで課外活動に取り組んでいる学生の姿は、輝かしい笑顔であふれかえっています。

グラウンドで動いている学生たちをみているとつい動きたくなり、ランニングシューズを履いてこっそりトレーニングを始めました。予想以上に体は重いのですが、動ける幸せを感じています。学生たちは、おじさんの私にはわからなかった本当の幸せを知っていたようです。

自分の住んでいる街を散歩したりランニングしたりすることで、小さいながらも、本当の幸せを感じてみてはいかがでしょうか。

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